2014/04/02 16:22:08

4月号 糖尿病性腎症について



糖尿病患者さんに合併症としての腎障害が起こるまでには10年以上もの歳月がかかります.でも油断は大敵,一度腎症を発症してしまうと急速に腎機能は低下していきます.

現在,新たに透析を受ける方の4割以上は糖尿病が原因です.毎年全国で1万5千人以上の糖尿病患者さんが透析治療を開始されています.


■糖尿病性腎症の経過

血液中の老廃物や余分な水・ミネラルは腎臓の糸球体でろ過されて体の外に排泄されます.糖尿病のために高い血糖が続くと毛細血管の塊である糸球体に負担がかかり,糸球体のろ過機能が低下して重要なタンパク質であるアルブミンが尿中に漏れ出すようになります.

さらに腎症が進行すると漏れ出すタンパクの量が増え,老廃物や水・ミネラルを捨てる機能も低下しむくみなどが現れます,

ついには老廃物や水・ミネラルがほとんど排泄できなくなり,透析を受けないと生命が維持できない末期腎不全にいたります.


■糖尿病性腎症を早期にみつけるために

当院では,糖尿病の患者さんには毎月尿検査でタンパクと糖を調べていますが,タンパクが続けて陽性になるようであれば,すでに第3期の顕性腎症です.この段階になると,血糖のコントロールのみでは腎障害の進行を抑えることは困難で,厳格な血圧コントロールとタンパク制限が必要になります.

それでは糖尿病による腎障害をもっと早くみつけるにはどうしたらよいのでしょうか.最も有用な検査は,尿で微量アルブミンを測ることです.タンパク尿が持続的に出ていない糖尿病患者さんは3ヵ月に一度測定することができます.


■腎障害を進めないためには

まず大事なのは血糖をコントロールすること.食事・運動療法を基本として,必要に応じて薬を使い良好な血糖を保ちましょう.

また,塩分を控え血圧をしっかりコントロールすることも重要です.腎症が進行するとタンパク制限や水分制限,カリウム制限なども必要になることがあります.

腎症に限らず糖尿病による合併症を防ぐためには,禁煙する,コレステロールを正常に保つ,体重を増やさない,適度な運動を習慣づける,お酒を控えることが大切です.

腎症を発症する頃には網膜症も進んでいることが多く,視力を失わないために眼科を定期的に受診しましょう.


■この記事の配信元:久喜医院